むり、とまんない。


「胡……」

「放してっ!!」


もう、我慢できなかった。


普段の私だったらぜったいに出さないような大きな声。

遥の前でも出したのはあのとき。


遥とふたりきりで、遥の心の声を知った日の、次の日の朝。

私を心配してくれた遥を突き放したとき以来のボリューム。


「っ……」


ごめん。

ごめん遥。

息を呑んで、手首に込められた力が抜けたその瞬間に。


「胡桃っ!!」


遥の手を思いっきり振り払って、走って家を出る。


「胡桃っ!!」


後ろで遥のよぶ声が聞こえたけれど、振り向かなかった。


振り向けなかった。


だって、泣き顔なんて見られて。

泣きたいのは自分だって言われて、嫌われたくなかったから。
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