むり、とまんない。
「せっかく胡桃、運動神経いいんだから、勝たなきゃもったいないじゃん!」
「ごめん」
今はあーちゃんと私を含むチームで試合だったけど、隣のコートに遥がいると思うと集中できなくて。
得意のバレーも、ミスばかりしてしまった。
「で、でも、あーちゃん。
不知火くん、見なくていいの?」
もちろん試合中はだめ、だけど。
今は休憩中。
いつもだったら、他の女の子を押しのけて一番前の最前で、応援してそうなのに。
でもあーちゃんは、応援するどころか、見向きもしない。
「だって、ここで応援してたら他の子とおんなじじゃん!不知火くんは、ただ応援してる子よりも、試合に勝つために一生懸命がんばってる子のほうが好きだと思うから!」
「そ、そうなんだ?」
つまりは、自分なんかに見向きもしないで、試合を勝とうと頑張ってる方が、すきってこと、らしい。
「それなら胡桃だって、言えることじゃん。
応援、しなくていいの?」
「べつに、いいよ……」
だって私より何倍もキレイな芸能科の子とか、たくさんの子が遥の名前を呼んで、遥のことを応援してる。
それなら私だって、あーちゃんみたいに、応援をがんばるよりも、自分の試合に集中したほうが、がんばってるって思ってもらえると思うから……。
「ってちょっとあーちゃん!?
勝手に私の心の声、アテレコしないで!?」
「だって、胡桃があまりにかわいい顔してるんだもん。それに、当たりでしょ?」
「な、なにが……」
「あたしがアテレコしたの、実際に思ってることでしょ?」
「っ、ちっ、ちがうよ!
ほ、ほら、もう試合はじまるから……!」
「あたしたちの試合、まだあとだけど?」
「なっ!」
「あら〜、顔あっかい!
男子みーんな、はずかしがってる胡桃のこと、見てるよ」
「み、見てないってば!」
私なんか見てどうするの?
芸能科の子がたくさんいるのに。
「そりゃあ、胡桃が美人さんで可愛いからに決まってるじゃん!うりゃうりゃ〜!!」
「ちょっ、やめてよあーちゃん!!」
「自分に自信がないんだったら、あたしがかわいいって何回も言ってあげる!それなら少しは自信つくでしょ!」