むり、とまんない。


なんで、目、あけてるの……っ。


前髪からのぞく伏せられた瞳は、ずっと私を見ていて。


『すき、好きだよ。すげえ好き』

『こんなに俺は好きでたまんないのに、なんで伝わんねーの』


「胡桃……、胡桃」


熱に浮かされたかのように何度もよばれる名前と、好きの数。


『ちゃんと見て、俺のこと。
俺から目、はなさないで』


心を見透かすようなまっすぐな視線が、熱に濡れて私にいくつもの愛を紡いでいる。


「っ、はぁっ……はぁっ、」


それから唇が離れたころには、ドッと全身から力が抜けて、息を荒らげるしかできなくて。

なのに遥は。


「『胡桃……』」


一つも息を乱さないまま、

まぶた、こめかみ、耳へとキスを降らせて。


「『好きだよ』」


囁かれた低くて甘い声に、全身が震える。

こんなの、遥しか見えなくなる……っ。


「っ、も、もう……」


限界だよ。

そう伝えたくて、潤む瞳で見上げれば、


「俺がどれだけ胡桃を好きか、わかってくれた?」


クスッと笑いながらも、逃がさないと言わんばかりに私を見つめたまま。

握っていた手をとって、指先にふわりと口づけを落とす。


「俺が芸能界に入ったのだって、胡桃が好きだったからなのに」


「え……」


それって……。


「俺が芸能界に入った理由は、胡桃をふり向かせたかったから、なんだよ」
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