むり、とまんない。

【遥side】


俺が芸能界に入った理由。


それは。


『っ、いいからっ!!
先にいっててよ!』


俺を避け始めた大好きな幼なじみに。


『遥』


その大好きな笑顔と声で、また名前をよんでほしかったからだ。



***


いつから、なんて言われても、気づいたら、としか言えない。


胡桃のことは保育園のときからずっと好きだった。


『昨日もさ、たまたま出かけようとした俺に、いってらっしゃいって言ってくれたんだよ。かわいすぎない?』


『それ、いつも言ってない?』

『遥はさ、一日何回かわいいっていえば気が済むの?本人に言ってあげなよ』


杏にも桃華にも呆れられるほど俺の気持ちはバレバレだったのに、悲しいくらい鈍感な胡桃はまったく気づいていなかった。


だから、小学校でも中学でも必ずと言っていいほど、胡桃のそばにいて。


彼女の隣は俺しかありえないって。

胡桃は俺のだといつも周りに牽制していた。
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