むり、とまんない。

「もう、遥……っ!」

「まだだーめ」


今度はキッ!と睨みつけるように下から見上げてきたけど、りんごみたいに真っ赤で。


そっとまぶたをなぞれば、ピクリと跳ねる胡桃。


愛おしい。かわいい。

また「好き」が降り積もる。


「最後に一つだけ、聞いて」

「ま、まだあるの……っ」


「うん。
でもこれで、ほんとに最後だから」


ふわっとおでこにキスを落として、内心ほくそ笑む。


俺の心の声だけが聞こえる。


胡桃は俺に嫌われるって思ってたみたいだけど、こんなの嬉しい他ない。

だって、好きな子の特別になれたみたいだから。


「と、特別……」

「そう。
胡桃だけ」


ホッとしたように息をはいた胡桃の頭をなでた。


俺はもう二度と胡桃から離れないし、

むしろ、胡桃が俺から逃げだしたいって言わないかが心配なくらい。


「え……」


そうだよな。

最初は嫌われると思ってた相手からそんなことを言われるなんて。

でも、これは今後の、胡桃のコンプレックスをなくすために必要で、俺をぜったいに好きになってもらうために必要だから。


「そ、それってどういう……」


目を白黒させてあたふたする姿もかわいいと思いつつ、じっと見つめて俺は言った。


「俺とつきあって、俺のそばにいて。
それだけで胡桃のコンプレックスはなくなるから」
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