むり、とまんない。
「ちなみだけど、どういう内容なの?」
「んーとね、ふつうに学園モノ!
杏とあたしが同じクラスの同級生って設定なんだけど、まったく接点はなくて。とあることがきっかけで、距離が縮まるって感じかな」
「そ、そうなんだ」
聞けば原作の少女マンガがあるらしく、それの実写化なんだとか。
幼なじみ歴長いふたりだし、相性もバツグンなはず。
今度そのマンガ読んでみようかな。
「で?
それと俺たちが付き合ったこと、なんの関係があんの?」
「え、なんでそんな怒ってんの?」
「べつに怒ってない」
『桃華はいいとして、他の男のことで喜んでるのなんか複雑。胡桃は俺のなのに』
「っ……!」
テーブルの下。
隣に座る遥から伸ばされた手が、私の手をそっと開いて。
するりと指が絡んで、甘えたように手の甲をなでられる。
っ、くすぐったい……。
「まあ、なんとなく想像つくけどさ。
さっきの話に戻るけど、そのドラマの撮影、実は明日からなんだ」
「明日!?」
「急すぎだろ」
杏の言葉にさすがの遥も驚いたみたい。
ドラマの撮影って、そんな急に始まるものなの?
「仕事のスケジュール上、仕方なくて。とりあえず1ヶ月なんだけど、舞台になるとこがここから結構遠いから、しばらくの間、ホテルに泊まろうと思って」
「えっ、で、でも学校は?」
「マネージャーさんに送ってもらうよ。
だから桃華と俺、1ヶ月くらい家あけるね」