むり、とまんない。


「い、いってらっしゃい?」


「うん。胡桃、いつも朝早く行ってたから会うことほとんどなかっただろ。これもずっと夢だった」


「遥……」


「それと……」


「っ、きゃっ!?」


「おはよう、胡桃」

「っ、えっ、えっ!?」


クスッと笑った遥は私の背中に手を回して抱き起こすと、ぎゅうっと全身を包むように抱きしめた。


「あと、プラスでぎゅーもしたくて」
『ほんとはキスもしてくれたらうれしいけど、まあそれは追追で』


「っ、なっ、キスって……!」


「うん。
朝は胡桃から。で、夜は俺から」


『朝だと歯止め効かなくなったら困るから。
夜ならどれだけしてもいいもんな』


「っ、ばかっ!」


「だから、そのばかもかわいいって言ってんの」
『あー……仕事行きたくない。ずっと胡桃とイチャイチャしてたい』


「っ、なっ、だめでしょ!
ちゃんと行かないと!」


「んー……でも、」


そっと肩から顔を上げて、じっと見つめてくるやわらかい瞳はなにか言いたげで。


「な、に?」


「んーん、なんでもない」


っ、なにそれ。

敢えてなにも言わないで、ふっと笑うだけ。


『……』


こういうときに限って心の声も静かで。


わかってやってる。

ほんと、いじわる……。
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