むり、とまんない。


それからメイクをはじめた河内さんにならって目を閉じる。


「にしてもさ、遥ってあんな顔するんだね」


「あ、あんな顔って……?」


「胡桃ちゃんを見る目、すごく優しくてさ、見てるこっちがはずかしくなるくらい雰囲気も甘いし。普段クールな姿しか見てないからびっくりしたよ」


「まあ、遥くんの話は、業界でも有名な話ですもんね〜」


「遥の、話……?」


「そうよ〜!
bondの遥には溺愛してやまない彼女がいるって話!ねっ、清見さん!」


「そうそう。
胡桃ちゃん、これ、俺から聞いたって内緒な。
元々遥、芸能界に入るの、めちゃくちゃ嫌がってたって知ってる?」


「はい、それは……」


前に話してくれた。

元々興味のかけらもなかったって。


「事務所はどうしても遥を欲しがってたけど、遥もどうしても嫌だって言って。で、理由聞いたら好きな子がいるから、その子と離れたくないし、恋愛禁止になるくらいなら、その子とのことを認めてくれるならいいって」


「えっ……えええーーーっ!?」


「やだ〜、ロマンチック!」


遥、大人の人相手にそんな上から目線なこと言ってたの!?


「な、驚くでしょ?」


「ほんと、あのクールで女嫌いで有名な遥くんに好きな子が、しかも幼なじみでmomoちゃんの妹さんなんて、びっくりよね!」


「まあ、それが胡桃ちゃんなわけだけど。
交際と、その先までを認めてくれることが大前提だって、中学3年の子が言うもんだから、さすがに事務所も驚いたよね。まあ、それをOKした事務所も事務所だけど」


「じゃあ、それで……」


「そう。
それで遥は芸能界に入ったんだ」
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