むり、とまんない。

想いを伝えることに気をとられて、完全に目の前のことを忘れちゃってた。


「泣かせちゃったし、メイク任せましたよ、河内さん」


「誰に言ってんの。
胡桃ちゃん、勇気が出る魔法、女の子がかわいくなれる、とびっきりの魔法をお姉さんがかけてあげる」


「河内さん、お姉さんは年齢的にちょっと……」


「そこに座れ清見。
おまえには、ゴテゴテのゴスロリメイクしてやるから」


「それはやめてください」


ふふふ。


そんなふたりのほほえましいやりとりを、クスクス笑いながら聞く私。


心臓がトクトクと速い。


ドラマへの緊張のせいか、それとも想いを伝えることへの緊張か、それは分からないけれど。


私は、今自分ができる精いっぱいのことをやるだけだから。


遥。


遥。


今度は私が遥にぶつかっていくから。


待ってて。
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