むり、とまんない。
***


「うっわ、超かわいい〜!!」


「胡桃、もうホンモノの女優さんじゃん!」


「あ、ありがとう……」


それからメイクをしてもらった私は、メイク部屋へと迎えに来てくれた桃華と杏と話していた。


「こりゃあ遥、独占欲の嵐だな」

「ふふふ、遥くんの反応が楽しみね!」


「見物だよね、杏」

「楽しみすぎてこのあと集中できる気しないわ」


清見さんに、河内さん、桃華に杏まで、全員が頬を緩ませてニヤニヤしている。


けれど私はいろんな意味でドキドキしていた。


いつもは下ろされた髪も、今はキレイにまとめられてポニーテールに。


ブラウンのアイシャドウだったり、きつめに引かれたアイラインや赤いリップ。


どこかギャルっぽさを感じさせるメイクに、普段はしない分、より別人になった気がして。


どんな反応してくれるかな、遥。

私、ちゃんと演技できるかな。


いろんな思いに鼓動がトクトクと速い。


「お疲れ様です、監督!
代役で妹の、橘胡桃です」


「橘胡桃です。
よ、よろしくお願いします」


「君がmomoちゃんの妹さん!?
本当にどこの事務所にも入ってないの!?」


「は、はい……」


「彼女はごく普通の高校生です」


驚きの顔を浮かべる監督さんに、清見さんが助け舟を出してくれた。
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