むり、とまんない。


セーラー服な私とは反対に、黒の学ラン。


学ランは前を開けていて、白いカッターシャツは、ボタンを上から3つほど開けている。


そのすきまからはシルバーのネックレスが見えていて、


髪はセンター分けで、コテでセットしたのか、ゆるいパーマをかけたみたいになっている。


カ、カッコよすぎる……。


おでこを出してセットされた髪型なんて見たことないし、普段のピアスも相まって、ネックレスがめちゃくちゃ似合う。


どこかわるい雰囲気があるのに、清潔感があって。


他にもかっこいい出演者の人はたくさんいるのに、誰しもを圧倒するそのオーラに、周りの人全員が息を呑んでいる。


「胡桃、だよな?」


「う、うん……」


『……』


珍しい……。

心の声、静かだ。


『……くっそ』


え?

そう思っていたのもほんの一瞬。


『は?くっそかわいいまじで。え、かわいすぎない?かわいすぎなんだけど。俺の彼女、いつも世界一かわいいけど、今宇宙一じゃん』


!?

なっ、なに!?


『昼休みからずっと我慢してんのに、ほんと押し倒していい?襲いたいんだけど。てか、胡桃のかわいい姿誰にも見せたくない。本気でこのかわいいので出んの?監督本気?俺無理なんだけど』


一気に流れ込んでくる情報に、頭が追いつかない。


「………」


いろんな人の前だからなにも言わないし、顔はいつもと同じクールで淡々としたまま。


その反動なのか、心の声がいつにも増してうるさすぎるっ!!


『あー……かわいい、かわいい、ホントかわいい。胡桃すき。すげえすき。ホントがんばってよかった。こんなにかわいい子が俺の彼女とか最高。あーこのまま家帰って抱きしめて、キスしていろいろしたい』


「っ、はる……っ」


「胡桃?どうかした?」


「っ、はー……なんでもない」


よし。


よく我慢した私。


遥の心の声に今にも叫びたいのを必死に堪えて我慢我慢。


ほんと、今にも逃げ出さなかった私を誰かほめてほしいよ……。
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