むり、とまんない。
「あのねぇ、胡桃!
よく聞きなさい!」
「はい……」
「遥くんは、何度も何度もすきだって言ってくれてるんでしょ?もう、これ以上にないくらい大切にしてもらってるでしょ?」
「はい……」
「遥くん、心の中じゃもちろんすきだって言ってるだろうけど、直接口に出しても言ってくれてるんじゃないの?」
「それは……」
たしかに遥、心の中でもそうだけど、ちゃんと声に出して好きだって言ってくれてる。
「もしたとえばの話、遥くんの心の声が聞こえなくなったらどうするの?」
ストンと座ったあーちゃんは、グッと身を乗り出してくる。
その目は真剣で、ちゃんと考えなさいって言ってる。
心の声が聞こえなくなったら……。
そんなの、考えたこともなかった。
中学のときから心の声を聞こえることがあたりまえすぎて、むしろこんな力なんていらないって思ってたのに。
でも今は、遥の気持ちが分かるからって、安心しきっていた自分がいる。
「胡桃は遥くんの心の声が聞こえるから、安心かもしれないけど、相手の心の中なんて分からないのが普通なんだよ。けど遥くんは、それ関係なしに、まっすぐ伝えてくれてる」
「そう、だよね……」
私は遥の心の声がわかるけど、ふつうは相手の心の声なんて聞こえないのがあたりまえで。
『胡桃の言葉で、声で、ちゃんと聞きたい』
『俺のぜんぶが胡桃。
胡桃は?』
素直になれない分、今まで待たせてしまった分、遥は何度も私に言葉にさせようとしていた。
マスクのことだって、これだって。
付き合っているのに、不安にさせている原因を作っているのはせんぶ自分じゃないか。