むり、とまんない。


分からない。

私にはやっぱりついていけない世界。


「遥!待ってよ!」

「………」


きゃああ!
遥くん!


普通科から芸能科まで数多くの女の子に騒がれてるのに見向きもせず、ただスタスタと校門へと向かう遥と、その後ろを行く杏。


その途中で。


っ、やばい……。

私のすぐ近くを横切った遥は。


『……最悪』


「っ!」


「ねえ!今こっち見たよね!?」

「見た見た!ぜったい見た!」


きゃあ♡なんて私の隣にいた女の子が黄色い悲鳴を上げたけれど。


女の子の前じゃ口を開かない遥の声が聞こえた。

同時に、こっちを見て眉をひそめたのが分かって。


最悪なんて、こっちのセリフ……。

ぎゅっと唇を噛みしめて胸がズキズキと痛むのをこらえてそこから離れる。


こんな思いをするくらいなら、さっさと帰ればよかった。

一日に二度も心の声を聞くことになるなんて、今日はほんとについてない。

それから二人に背を向けて、足早に学校を出た。
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