むり、とまんない。


「だから女嫌いになったわけ、だけど」


「え?」


それって、心の声が原因ってこと?


「そう」

「あの、だから、私の心の声に反応するのはやめてもらっていいですか……」


「だって、あまりにおもしろい反応してくれるから。ついね」


なんて口角をあげて笑う甘利くん。

ほんと、こうやってふつうに笑ってると、学校で見る人と同じとは思えないよ。


「俺さ、物心ついたときから他人の心の声、聞こえてたんだけど」


「うん……」


「この見た目だし、まあ、いろんな女が寄ってくるわけ。容姿がいいから、彼氏にしたら自慢できるって」


「それは……」


遥も同じこと言ってたっけ。

容姿だけで好きになられても困るって。


甘利くんだって、遥だって、いくら容姿が整ってたって、一人の人間で生きてるのに。


そんな見せ物みたいに人に自慢しようだなんて、ひどい話だ。


「にこにこ笑って近づいてくるけど、どの女もみんなそういうこと考えてるやつばっかで。まあ、芸能界に入ってもそれは変わんなかったから、この性格ができあがったってわけ」


「そう、だったんだ……」


心の声が聞こえる。

それはいいことばかりじゃない。

聞きたくないことまでぜんぶ聞こえちゃうから、特に甘利くんの場合は不特定多数の人が対象だから、私以上に。


苦しくてつらい思いをたくさんしてきたんだ。


「それに、この容姿だって、本当はめちゃくちゃ嫌だし」


「どうして?」


「女っぽい名前に拍車をかけてるから」
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