むり、とまんない。
「みはやくん……」
「え?」
「たしか、みはやくんだったよね、下の名前」
「っ……」
名前のコンプレックスなら、私だっていっしょだ。
桃華と胡桃。
昔から自分のなまえが嫌いだった。
華やかな桃華と、地味な胡桃。
名前をよばれるたびに、そう言われてるみたいで。
でも……。
昔、遥や杏以外で、私は私だって言ってくれた男の子がいた。
たしか保育園のとき。
桃華が郡をぬいてかわいかったせいか、もうその時から桃華はかわいい、かわいいって周りの男の子たちに言われてた。
でもそんな中で一人だけ、私をちゃんと見てくれた子がいて……。
「俺も」
「え……?」
「ずっと名前にコンプレックスがあって、小さい頃からずっと、女っぽい、かわいいって言われ続けてきた。それは今になっても変わらない。けど……」
「かっこいいって言ってくれた女の子がいたんだ」
甘利くんは見たことがないような、穏やかな顔で笑って、手を目にかざして空を見上げた。
「はー……きっつ」
「え?な、なにが?」
「んー、結局あいつが相手なんだなって」
あいつ?
相手?
いったいなんのこと?