むり、とまんない。


「よし……」


玄関へと向かって、一つ深呼吸。

ゆっくりドアを開ければ、甘くほほえむ遥がいて。


「は、はるか……っ」


「ん」


「お、おかえり……っ」

「ん、ただいま、胡桃」


首に手を回して抱きつけば、遥も弾んだ声で目をとけさせてぎゅうっと返してくれる。


『最高すぎる……もう、新婚だよな、これ』


なんて心の声が聞こえて、また体がかちこちになるけれど。


「あの、ね、遥……」

「うん?」


その顔が少し疲れたと言ってるのはすぐにわかったから。


「お、お風呂にする?
ごはんにする?
それとも……わた、し?」


はずかしさとか、そんなのぜんぶ吹き飛んじゃって。

いつもいつも大切にしてくれてる分、今日は私が少しでも遥に素直になれたらって。

あとは、いつもいじわるされてるお返しもちょっと。


「っ……!」


背伸びしてキスして、その胸に擦り寄る。

遥の心音、速い。


ちょっとはドキドキしてくれた……?


「っ、はぁ………」


「はるか……?」


「……っ、どこでこんなかわいいの、覚えてきたの」


「っ、えっ、ちょっ、」


これは予想外!!


「答えは……胡桃にする」


そう言って私を抱きあげると、早足で私の部屋へ。
< 261 / 346 >

この作品をシェア

pagetop