むり、とまんない。
「crown?」
「……胡桃をなるべく甘利に近づけたくない」
そしてまたぎゅうっと抱きすくめられた。
近づけたくない。
その意味が、まだちゃんと理解できてない、けれど。
「私はいくらかっこいい人が目の前で歌ってたって、bondしか……遥しか見えてないよ」
私は遥のファン第一号だから。
まだデビューする前、遥が自分の部屋で歌ってた頃から私はずっと応援してる。
それに今は彼女で、遥がすきで隣にいる。
「私はいつだって遥のことしか考えてないし、遥しか見えてないよ……」
面と向かってこんなちゃんと言えたの、初めてかもしれない。
自分が変われている気がして、ちょっぴり嬉しい。
「胡桃……っ」
「うわっ、ちょっ、遥!?」
「あー……もう、いつからそんな男前になったの。俺、ほんと胡桃には敵わない」
「えっ、えっ!?」
慌てていたら、どこか吹っ切れたように私の体を持ち上げて、遥の膝に座らされる。
またこの格好!?
ほんとはずかしいのに……。
「俺もずっと、胡桃しか見えてない。
胡桃が俺のすべて」
でも珍しく真剣な目をしていたから、抵抗なんかできなくて。
『ぜったい胡桃は渡さない』
キスされる直前。
心の中でそう言っているのが聞こえた。