むり、とまんない。


「この間も言ったけど、俺を、ちゃんと俺を見てくれたのは橘だけだった」


「うん……」


「思い出した?」


「うん」


たしかあのとき。


『俺、女の子みたいだから、近づかないほうがいいよ。顔も名前も気持ちわるいって。他のみんなもそういってる』


『どうして?』


『え?
みはやって名前、すごくかっこいいのに』


甘利くんは、いつも1人で遊んでるタイプだった気がする。


遥や杏だって、女の子たちからかっこいいって言われて、いつも囲まれてた。


そういうときは、私もだいたい一人だったから。


「甘利くんに言われた言葉、聞き覚えがある気がして。遥に甘利くんと保育園が一緒だったって聞いて、確信をもったの」


「そっか」


「親の都合で小学校も中学も遠いところだったし、結局それっきりで、初恋なんてそんなもんだと思ってた。元々幼なじみの遥に勝てるわけないって」


「うん」


「けど、bondとして、遥がデビューしたのを知って、もしかしたらって思えた」


「もしかしたら……?」


「もしまた遥と会えば、橘とも再会できるかもって」


「っ!!」
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