むり、とまんない。
***


それから2週間。

遥とはほとんど顔を見合わせていない。


けれど。


『毎日おいしいごはん、作ってくれてありがとう。いってくる』


『文化祭、ドレス着るって聞いた。
見たいけど、かわいい姿、他の男には見せたくない』


『遥も王子様の格好、するんでしょ?
私だって、遥のかっこいい姿、見せたくない』


『っ、かわいすぎ。
今度ふたりのときにそれ、言ってくれる?』


遥は深夜に帰ってきて、早朝に出ていく。

必然的に話す機会は減ってしまったけれど、こうしてホワイトボードでやりとりをしているから、ぜんぜん寂しくない。


毎日栄養のあるごはんを作れば、ちゃんときれいに食べてくれて、洗い物までしてくれて。


『疲れてるでしょ?
嬉しいけど、洗い物までしなくていいよ』


『これくらい俺にやらせて。
いつも家事やってもらってるし』


『そんなの平気だよ。
遥のためなら、なんだってがんばれる』


『あのさ、なんでこのやりとりしてるときに限って素直になんの?めちゃくちゃキスしたくなる』


『私も……遥にふれたいよ』



そう、書き残した夜の次の日。


「あーちゃん!
喉乾いたから、自販機いってくる!」


「りょーかい!」


あーちゃんに一声かけて、教室を出る。

今日も暑いなぁ……。


真っ青の空には雲一つなくて。


朝から気温は優に30度は超えてる。

少しくらい、雨降ってくれてもいいのに。
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