むり、とまんない。


「疲れからくる熱だって」

「そう、ですか……」


慌てて部屋に入ってドアを開ければ、そこにはおでこにタオルを乗せて寝ている遥がいた。


「今日、最後のリハ中に倒れたんだ。
朝からいつにも増して静かだから、ちょっと変だとは思ってたけど……」


聞けば杏がここにいるのは、遥を運んできたためで、今は病院に行ってきて、帰ってきたばかりだそうで。


「熱……何度あるの」


「さっきは39度まで上がってたけど、解熱剤飲んだから、38度まで下がってる」


38度……。

でもまだ38度もある。


元々少し低温だから、いくら下がったって38度はつらいにきまってる。


それにまた今から上がるかもしれない。


今も寝てはいるけど、息は荒いし、顔もほんのり赤くなってる。


「っ……」


つらそうな遥を見ていられなくて、グッと唇を噛みしめてうつむく。


「ごめん、胡桃ちゃん」


「……どうして清見さんが謝るんですか」


「俺がちゃんと見ていたら、こんなことにはならなかった」


視界がかすむ中でゆっくりゆっくり顔をあげれば。


私の前で、頭を下げた清見さん。


「遥が無理してるのは知ってた。
けど、大丈夫だって言葉に安心して、こうなるまで止めなかった」


グッと何かを我慢するように、顔を伏せる清見さんに、鼻の奥がツンとなる。


そんなの、そんなの……っ。


「くる、み……?」
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