むり、とまんない。


その声に、ふっと顔をあげると、遥は私に手を伸ばしていた。


「胡桃……こっち、きて」


「でも……」



「いいから……。
清見。胡桃と、ふたりにして」


「……わかった」


「胡桃。
まだ負けって決まったわけじゃないからね」


「胡桃。
あんたが気持ちで負けちゃ、だめなんだからね」


「桃華、杏……」


じわりと涙が流れそうになるのを寸前でこらえた。


「胡桃ちゃん……」


「清見さん」


なにかを言いかけた清見さんの言葉に被せるように、口を開く。


だれが悪いとかじゃない。


遥がこうなるまで無理してたからとか、清見さんが見てなかったとか、そんなことは問題じゃない。

今は。


「遥の体調が優先ですから」
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