むり、とまんない。
──────────


『あとは任せたよ』


そう言って3人は帰っていった。


「胡桃……こっち、きて」


「うん……」


「だめ、こっち」


「っ、風邪移っちゃったら、遥の看病できなくなるから、」


「いいよ。
そしたらふたりで寝てればいいし」


ベッドのそばにイスを持っていって腰かけようとしたとたん。


グイッと手を引っ張られて、危うく遥のベッドに倒れ込むところだった。


「な、お願い」


「っ……」


眉を下げて、しょぼんとする遥。

熱が出ているせいか、目が潤んでて子犬みたい。

しかも寝ているから上目遣いで。


っ、もう……。


「はぁ……やっときてくれた」


「遥……っ、」


「『顔真っ赤。
ほんとかわいい』」


「ううっ……」


遥の顔の横に手をついて、押し倒してるみたいな体勢。

汗をかいてるせいか、変に色気があって、どこを見たらいいのかわからない。


『……』


熱のせいか、いつもより心の声は静かだけど、


「力抜いて、体倒していいよ。
俺、もっとちゃんと胡桃とぎゅーしたい」


いじわるなのがまったくなくて、むしろ甘えてきてる気がして。


「っ、もう……」


ばか、遥……。


ズキュン!と胸が打たれたみたいになる。
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