むり、とまんない。


「はい、逃げない」

「に、逃げてない!」


「じゃあ、なんでそんなに腰引けてんの?」


「それは、遥が近づいてくるから……っ、」


「うん。近づいてる。
だって今から、おしおきのキス、たっぷりするから」



「っ!?」



頭の中で警報は鳴ってるし、背筋に汗が伝った気がしたけど、遥はにっこり笑うだけ。


「あのとき俺、てっきり胡桃は寝てると思ってたんだけど。寝たフリ、してたんだ?」


「……」


「聞こえてたんだ?」


「ひゃっ、ぅ……!」


両手は遥の顔の横についてるから、

するりと太ももを行き来する手をどけることができない。


「心の中とはいえ、俺、あのときだいぶはずかしいこと言ってた記憶、あるんだけど。一生寝顔見てたいとか?俺の名前呼んでほしいとか?」


「……」


「胡桃。聞いてる?」


「っ、ぁ、聞いて、る」
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