むり、とまんない。


「エール?」


「うん。
最近おかえりとか、行ってらっしゃいって言ってもらえてなかったし」


「うん……」


「この間みたいに、胡桃から、キスして」

『そしたら俺、明日がんばれるから』


前の私だったら、ぜったいはずかしがってできなかった。

でも今は、遥のためならなんだってできる。

遥の力になれるなら、なんだってしてあげたい。


遥が私のためにがんばっている隣で、私も遥のためにって、立ち続けられるように。


「分かった」


熱で少し潤んだその目をまっすぐ見つめて。


「遥」


「なに?」


「いってらっしゃい」


だいすきな手に指を絡めて。


「ん。ただいま」

「おかえり」


だいすきな遥へ、想いを込めて。


「遥……」

「なに?」


「だいすき」

「俺も」


ぎゅうっと抱きついて、甘いキスを交わす。


明日には熱、下がってますように。

そして明日、bondが……遥が、勝ちますように。
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