むり、とまんない。


ブラウンを基調としたメイクに、髪はゆるく巻いて、片方に流している。


「みんなー!
見てみて!」


「ちょっ、あーちゃん!?」


なぜか周りに呼びかけるようなあーちゃんの声に、わらわらと集まってきた中には不知火くんもいて。


「橘さん、すっごくきれいだよ」


「きゃあああ!!」


「ひっ!」



教室のあちこちでバタバタと倒れる音がして、思わず悲鳴をあげる。


もちろん、あーちゃんも……。


「やばい、鼻血でる……」


じゃ、なかった。


今にも昇天しそうな顔で、床に這いつくばって、震えながらスマホを構えてる。


さ、さすがアイドル。


白に金の刺繍が入ったタキシードに、同じ白のズボン。

まさに、童話の中から出てきた王子様みたい。


「よし、じゃああたしも準備しますか!」


さっきまでの鼻血がどうのって言ってたあーちゃんはどこへやら。


「あーちゃんは、裏方じゃないの?」


「ちがうわよ!
今度こそちゃんと、胡桃のボディーガード頼まれてるの!」
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