むり、とまんない。
ステージが一瞬真っ暗になったかと思うと、紫のライトがふたりを照らす。
「スカート翻して 階段を上る君
この瞳は もうとっくに」
騒いでいた女の子たちが静かになるほど、たっぷりの色気を含んだ遥の声。
聞くだけで体がぞわぞわとして、それは鳥肌が立つくらい。
「視界はもう君だけ
どうして 焦らさないで 」
「交わる吐息 絡まる衝動
求めてほしい 声に出して」
いつもは穏やかな杏の声も、今日はどこか低くて甘ったるい。
ダンスも歌詞に合わせて、腰が揺れたり、口に手を当てる仕草が多かったり。
すぐうしろでだれかがゴクッと息を呑む音が聞こえた。
「甘いね 君のすべてが
激しい鼓動 たりない熱を 溶け合わせて」
夏の暑い中、ふたりの顔に汗がつたう。
最後のサビに向かうにつれて、ダンスも歌もその大人っぽさが郡を超えて。
「惹かれて 求め合って
夜明けまでずっと 君を放さない」
「っ……!」
最後の歌詞を歌いきった瞬間。
甘利くんと同様、遥も息を荒らげながら私をじっと見ていて。
ドクンと体中が熱くなる。
「ありがとうございました」
そして、ふたりが退場したあと、しばらくして。
「きゃあああ!!
なにあれ、なにあれ!?」
「色気やばすぎ!
かっこよすぎるって!」
会場全体に黄色い悲鳴が響き渡って、遅れたように拍手がやってくる。