むり、とまんない。
「じゃあ、私行くから」
「あっ、待って胡桃!」
桃華のこと、よろしくね。
それだけ言って足早に行こうとしたら。
「杏、俺先にいく……」
!!
続いて出てきた人物に、ひゅっと喉の奥で音がした。
杏とは二卵生だからあんまり似てないけど、誰もが振り返るくらい美形で。
さらさらの黒髪に、涼しげな目元。
小顔で身長があるところは杏と同じなのに、どうして……。
「………」
「………」
『なんでまだいんの?
いつもだったらいねーのに』
口、悪い……。
お互い黙ったままなのに、聞こえてきたのはその言葉。
そうだよね。
いつもならとっくに学校に行ってる。
でも今日は、朝に強い桃華が寝坊しちゃって。
私もバタバタしちゃったから。
そんなに嫌そうな顔、しなくてもいいのに。