むり、とまんない。
「弓削遥。
よろしく」
「きゃあああ!!」
「遥くーん!!」
えっ、それだけ?
他の芸能人の人たちは、みんな所属してるグループとか職業を言ってるのに。
遥は無表情……というか、むしろ不機嫌な顔で名前だけ言うと、スタスタとすぐに席に戻ってきた。
たぶん女の子たちの悲鳴やら、熱すぎるほどの視線をビシバシ浴びているからだと思うけど……。
『はぁ……』
心の中でため息をついたあとで。
カタンとイスが引かれて、遥は座った。
『やっぱ同じクラスっていいな。毎日顔見られんの、最高』
『女子はまあ、あれだけど……胡桃と隣ならそれ以外どうでもいい』
遥。
さっきからなに、言ってるの……?
私の席は一番窓側で、遥はすぐ隣に座っている。
なんとか下ろしている髪で顔を隠そうとするけれど。
『あー、かわい。
こっち向いてくんないかな』
なんで、こんなことになってるの……!?
とまらない心の声に、背中も手のひらも、ずっと汗でびっしょり。