むり、とまんない。
***


それから。


「もう、どうしようかと思ったんだから……」


「ごめんって。
だって胡桃、遥のこと避けてるから」


「そうだけど、同じクラスなんて聞いてないよ……」


あれからHRが終わってすぐ。

私は桃華と杏と3人で屋上にいた。


男女ともに人気の桃華を連れだすのにはなかなか勇気がいったけど、


「桃華、胡桃がよんでる」


廊下から教室をのぞき込む私に杏が気づいてくれて、なんとか屋上にやってきた。


「杏……なんでいるの」

「ごめん、だめだった?」


「べつに、だめってわけじゃないけど……」


桃華を呼んでくれたのはありがたい、けど。

心の声のことは桃華しか知らないから、話しづらいといいますか……。

それに一番は……。


「ごめん、ついてきて」


しゅんと眉をさげる杏。

捨てられた子犬みたいに落ちこむから、うっと言葉に詰まるけれど。


だって!

桃華といるだけでも目立つのに、
杏ともいたら必然的に注目を浴びちゃうんだよ!


現にいろいろ言われてたし!


『momoちゃんの妹ってホントだったんだ!?
いいなぁ、私もあそこの立ち位置にいきたい……』


『bondのふたりと幼なじみって、前世にどんな徳積んだらなれるの?』


など、いろいろ。


『あのふたりといっしょにいても、見劣りしない橘さん、すごすぎない?』


なんてのも聞こえたけれど。

たぶん気を使って、お世辞を言ってくれてるんだと思う。

こんな凡人に、普通科の人たち優しすぎる……。


「けど、まさか隣の席とはねぇ……」

「それ!遥やばすぎ!」
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