むり、とまんない。
『芸能科の生徒がいて、嬉しい気持ちは分かるけどあんまりはしゃぐなよー』
チャイムが鳴って、HRが終わってすぐ。
『は、遥くん!
いっしょに写真いいかな!?』
『遥くん!
好きなタイプ教えて!』
『し、不知火くん!
あ、あたし、天草あすみっていいます……!』
『あ、甘利くん!
あの、サイン書いてもらってもいいかな……?』
もちろん、先生のことばを守る人は一人もおらず、教室中が大騒ぎ。
特に遥の周りは大混雑で、隣のクラスから他学年から。
周りは女の子ですぐにいっぱいになる。
こ、これはチャンス……!
『あー……だるい』
とにかく外の空気を吸いたいと席をはなれた瞬間。
一気に不機嫌になった心の声が聞こえたけれど、スルーした。
囲まれるのがイヤな気持ちは分かるけど、助けるのはむりです!
ただでさえ隣の席だし、教室に入ってきた瞬間、「胡桃」なんてよばれるし。
私がbondのふたりと幼なじみなのは、周知の事実だけれど、やっぱり過激なファンもいるかもしれないし……。
なるべく授業以外では、距離をとりたい。
そう思ってとにかく桃華に話を聞いてもらおうと隣のクラスに行った私。