むり、とまんない。


「ええ……」


遥と同じクラスだったこと以上に衝撃的すぎて。


じゃあ私が避けてた意味って……とめまいがした。


てことは、だから杏は私に、今までどおり、普通に話しかけようとしてくれてたの?


遥の心の声が聞こえる。

だから、なに?みたいな感じで。


遥とは距離ができちゃったけど、杏は前と変わらず何度も話しかけてきてた。


この間、朝ばったり会ったときも。

ふつうにおはようって言ってきたよね。


「はぁぁぁ……ももか」

「ううっ、ごめんってぇ……」


気を使ってくれるのは嬉しいけど、言ってないことありすぎだよ、桃華……。


「まあまあ、桃華のこと、あんまり責めないでやってよ。仕事を放り出してでも。どうしても、理由が知りたかったから」


一瞬。

穏やかな笑みを浮かべるその瞳が切なく揺れた気がした。


「胡桃とはなれてから遥、めちゃくちゃ荒れてたんだよ。目も当てられないほどに」


「え……?」


「あー、そうだったね。
胡桃は知らないだろうけど、当時はすごかったねぇ……」


「あははー」と遠い目をしたふたりから、よほどひどかったんだと分かる。


「口の悪さとか、レッスンサボったりとか、マネージャーさんも手を焼いてたよ。
あ、でも女遊びだけは一切してなかったから、安心して」


「そう、だったんだ……」


兄の杏が言うんだから、まちがいない。


あのクールな遥が荒れるくらい、私は……。
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