むり、とまんない。
「いやー、楽しくなってきたねぇ、桃華さん」
「ほんとですよ、杏さん」
「ちょっと、ふたりとも!?」
私はこれからどうしたらいいのかを相談するために、ここに呼んだのに……!
親身どころか、めちゃくちゃテンション上がってて、ニヤニヤが抑えきれてないふたり。
「じゃあさ、これを機に遥と元の関係に戻ってみようよ!遥はそれ以上を求めてくると思うけど」
「うんうん!
まあ、幼なじみではいられないだろうね!」
それ以上?
幼なじみではいられない?
ふたりがなにを言ってるのかがわからない……。
「とーにーかーく!
胡桃は遥にかわいいって思われて、まあ若干……」
「え?」
「いや、かなり。引くぐらい重いと思うけど、いやではなかったんでしょ!?」
「えっ!?
あっ、う、うん……」
もちろん、いやではなかったよ。
びっくりした、だけで。
「ならかわいいって言わせとこうよ!
物理的にはなれてた距離もそうだけど、今いちばん遥の心に近い距離にいるのは胡桃じゃん。今まで知らなかった遥を知るチャンス!」
「な、なるほど……?」
「そーれーに、胡桃も知りたくない?
杏はまだしも、遥のほうは少なからず胡桃と距離をおいてたわけだし。かわいいって思われる理由も。知りたくない?」
「……知りたいです」
「桃華、なんだか愛の伝道師みたいだね」
「でしょ!?」
両手を腰にあてて、ふふふんと口端を持ち上げる桃華。
「遥のこと、もっと知って、とりあえず遥と前みたいに話せるようになろうよ。杏だって、また胡桃とごはん食べたりしたいもんね」
「うん。
遥も俺も胡桃をキライだとか、いやだとか思ったことないし、今もずっと大事な幼なじみだと思ってる。だから、昔みたいにまた仲良くしたい」
「杏……」
じんわりとあたたかいその言葉に、鼻の奥がツンとして泣きそうになったけれど。
杏はまた優しい顔で頭をなでてくれて。
桃華は「あたしがついてる!」と笑い飛ばしてくれた。