むり、とまんない。

夜、ふたりきり



放課後。


はぁ、やっっっと帰れる……。

帰る準備をしながら、ドッと疲れた今日一日のことを思い出す。


まず、遥が仕事で帰るまでの3限目まで。


『HR終わったあと、どこいってた?
まさか芸能科の男に気に入られたとかじゃないよな』

『女子の対応するの疲れたけど、胡桃の顔見たら一気に元気でた。まじでいやされる……』


などなど。

HRのときよりはだいぶ収まってたけど、聞こえるのは変わりなくて。


『あー、仕事いきたくない。
ずっとここにいたい。胡桃のそばにいたい』


『いっしょに連れていきたい。
あ、そっか。聞く前に連れてけばいいのか』


なんて言いだしたときには、さすがに声を上げようかと思った。


そして、遥がいなくなったあと。


『橘さんて、遥くんと付き合ってるってホント!?』

『え……ええっ!?
な、なんでそんな話に!?』

『名前で呼んでたし、脇目も振らず隣に座ってたから、てっきりそうなのかと』


『付き合ってない付き合ってない!
というか、幼なじみだからふつうじゃ……』


『……苦労するね、遥くん』

『えっ?』


『わかる。
美人さんだし、他の男がどうやらって、いろいろ大変そう』

『えっと……』


『橘さん!あたしたちはファンなだけで、決して恋愛感情があるわけじゃないから、がんばってね!』


『ど、どうも……?』
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