むり、とまんない。
とまあ、こんな感じで。
遥の心の声と、女の子たちからの質問攻めと謎のエールをもらって、めちゃくちゃ疲れた。
人生で一番心臓がうるさかった日かもしれない。
今日、なににしようかな……。
ぐうっとお腹は空いてる、けど、作るのはめんどくさい。
基本作るのは好きだけど、疲れてるときはさすがにあんまり乗り気じゃない。
桃華からメールで、今日も遅くなるって来てたし、凝ったものはやめよう。
ヘルシーで、野菜がたっぷりとれるものならなんでもいいよね。
「あーちゃん……私、帰るね」
「お疲れさま〜!」
お疲れさまって……。
夕方なのに、朝みたいなテンションだね、あーちゃん。
推しの力は偉大だ、ってやつ……?
宝物を見つけた子供みたいに、たぶんサインが書かれているであろうTシャツを大事に抱えて、同じcrownのファンらしき子と教室を出ていった。
「はいはい、ちょっとまってね。
押さないでね〜」
さすが、芸能人。
放課後になっても行列が絶えない。
不知火くんをはじめとして、このクラスの芸能科の人たちは、疎い私でも知ってるくらい、有名な人たちばかり。
どれだけ握手やサインを求められてもいやな顔一つせず、笑顔で応えててホントにすごい。
「あ、あのっ、耳元であまいことば、囁いてもらえませんかっ……!」
あっ、よく握手会とかで見るやつ……!
「うーん、そうだね……じゃあ、僕と、イケナイコトする?」
「「「する〜!!」」」
うわぁ、すごい……。
囁かれた子は昇天しそうな勢いでバタンとその場に倒れ、辺りはピンクのハートが埋めつくさんばかり。
さすがアイドル、どこぞの誰かさんとは大違い……。