その星、輝きません!
 次の日の朝、偶然にもクリニックの前を車で通りかかった。赤信号になり、ブレーキを踏む。特に見るものもないので、クリニックへ目を向けるとシャッターが下りたままだった。

 すると、ガタガタと物音がしてシャッターの下に隙間が開いた。下から見え出したのは、踏ん張っている足と、顔を真っ赤にして両手でシャッターを持ち上げている彼女だった。

 何故だろう? その顔を見たとたん、無意識に片手を上げていた。

 目が合った彼女は、俺に向かって手を振り返してくれた。その途端、ガタガタと無残にもシャッターは下りて行った。

 あはははっ!

 あまりにも間抜けな今の光景に、声を出して笑わずにはいられなかった。


 車を路肩によけると、クリニックのシャッターの前で足を止めた。シャッターが下りてしまったのは俺のせいのような気もした。

 ガタガタとまた音がする。彼女がきっと、シャッターを持ち上げたのだろう。外側から俺もシャッターを持ち上げた。

 ええ?!!!

 そこには、知らないばあさんの顔があった。


「うわああっー!!」


 思わず悲鳴を上げ、シャッターから手を離してしまった。


「ぎゃああー!!」


 ばあさんも驚いて、逃げてしまった。

 シャッターは虚しい音をたて、また下りてしまった。
 手で胸を押さえ息を整える。
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