その星、輝きません!
 テーブルを挟み、大きな窓を横に斜め向かいに座る。真向いより、リラックスして話せる人が多い。正直、私自身がそうだ。

「改めて、ご挨拶させていただきます。ハートケア色のカウンセラー鈴橋です」

 名刺を彼の前に差し出した。

「ありがとうございます。二枚目ですけどね」

「え?」

「昨日のカフェで頂いたので」

「ああ、そうでしたか。失礼しました」

 彼の表情や目線に神経を配る。あまり緊張はしていない気がする。人と話す事も慣れていると思われる。

 初回のカウンセリングは緊張した表情でこの席に座る人が多い。目を合わせられず俯いたままの人も居れば、とにかくイライラして暴言から始まる人もいる。多弁に全てを話そうとする人もいれば、何も語らずただ一緒に、窓からの眺めを見ている事もある。

 この人の場合は、今までのどのケースにも当てはまらない。
 すぐに本題に入った方がよさそうだ。


「急なご依頼でしたが、どのようなご相談でしょうか?」


 なんだかカウンセリングというより、仕事の取引でもしている気分になる。いけない、いけない。構えず、まずは相手に寄り添う事。


「久しぶりに時間が出来たので、何かしてみようかと……」

 彼は、あたかも当然のように言う。

「そうですか。お忙しかったのですね。私に何かお手伝いできる事があれば良いのですが……」

 否定してはいけない。


「ええ。昨日、アメリカから帰国したばかりなので。まだ、時差ボケです」

 あらー。時差ボケの後遺症でここに来てしまったのか?


「お疲れなのでは? せっかくですので、ゆっくりされてはいかがですか?」

 ありきたりの言葉しか出てこず、自分でもがっかりだ。


「このくらいで疲れはしないですよ。少し、話をしたかっただけです」

 もしかして、時間潰しにきたのか?
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