その星、輝きません!
「どうして、ここに?」

 彼女が、驚いた顔のまま言った。

「俺が、聞きたい」

「私は、用事があってここに来たんですけど……」

「俺だって、会社に向かう途中だ」


「そう……。こんな所でお会いするなんて奇遇ですね。それじゃあ……」


 彼女は、このまま過ぎ去ろうとした。そうはさせるものか!


「今日、約束したよな?」

 
 俺は、彼女を見下げて言った。


「ええ。すみません。急用ができてしまって。別の者が、お話を伺ったと思うのですが? どうでした?」

 彼女は、まるで業務内容を確認するかのように聞く。気に入らない。


「どうもこうもない。とにかく、車に乗って」

「はい? 乗る訳ないでしょ!」

「何故だ?」


「はあ? 普通、知らない人の車になんては乗らないわよ!」

「知らない人? もう、何度も顔も合わせているし、話もしている」


「だからって、どうしてあなたの車に乗らなきゃならないの! だいたい、私は急用があってここに来ているの。あなたの車に乗るほど暇じゃないんです!」


 彼女が、腕を振り払おうとした時だ。


「なにやってんだ?」

 自転車に乗った若者が、俺達の横で止まった。


「あっ。良太!」

 彼女の知り合いらしい。


「大声出してみっともないぞ」


「良太、助けて! 拉致されそうなのよ~」
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