その星、輝きません!
「それを、わざわざ言いに来たんですか?」

 意外な言葉に、思わず彼を見上げた。

「まあ……」

 昼間の偉そうな態度とは違い、申し訳なさそうに下を向いている。僅か数時間で、こうも変わる物だろうか?

 そうこうしているうちに、から揚げが出来上がった。

 帰れと言うタイミングを逃してしまい、三人で食卓を囲む状況になってしまった。


「うまそー」

 良太が、冷蔵庫からビールの缶を三本抱えて言った。


「おっさんも、飲むだろ?」

「いいのか?」

「もう、座っているし……」

 彼は、ちゃっかり食事を並べたテーブルの前に正座していた。


「とりあえず、乾杯か?」

 良太が、プシュッと蓋を開けた缶を持ち上げた。
 何に乾杯なんだ?

 彼も私も、缶を手にして持ち上げた。


「旨―い」

 良太が、から揚げを口いっぱいに頬張った。
 
 彼も遠慮がちに、から揚げを口に入れた。この部屋にいる事さえ違和感のある、彼の口に合うとは思えない。

 彼は、口にいれたまま一瞬止まった。
 吐き出すのだろうか?
 もしかして、こんな粗末な物、食べた事ないとか?

「うまい……」


 そう言うと、彼は、二つ目のから揚げに手を伸ばした。

 あー。うまいならいいけど……

 
 彼も良太も、大盛の炊き込みご飯をおかわりし、どんどんと皿の上の物を平らげていく。ビールも三本目だ。二人の食べっぷりを見ていたら食欲も失せ、つまみに用意しておいたチーズをかじりながら、ビールを口に運んだ。

 このおかしな状況で、よくもまあ呑気にパクパクと食べられるものだ。


「一条さん、無理してお食べにならなくてもいいですよ。普段、高級な物を召し上がっておれるでしょうから、お口に合わないのでは?」


「確かに…… 高級ではないです。でも、美味しい……」
 
 褒めたのか? 嫌みなのか? 悩む……


 彼は、少しだけ笑みを向けた。
 でも、この男、こんな顔するんだ。やめてもらいたい。急にほほ笑むのは……
< 33 / 96 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop