その星、輝きません!
「良太。バイトだけで生活なんて出来ないよ」

「分かっているよ、そんな事」

「長野に戻ってくるの?」

「今は、考えてない。俺にだってよく分からないんだよ!」

「何よ、それ。あまりに、考えなさすぎなんじゃない!」

 私の、苛立った声が響いた。


「そんなにすぐに先の事まで考えられるものじゃないだろ? 若いんだから、色々な経験を積めばいい」

 彼の落ち着いた声が、部屋の中のキリキリした空気を和らげた。


「だけど…… 良太には、しっかり勉強して、やりがいのある仕事について欲しいのよ」

 私は、両手を組んで額に当てた。

「姉として望む事はわかる。だけど、決めるのは良太だ」


 彼の言葉が胸に刺さった。分かってはいる事なのだが、改めて言われると、自分に何も出来ない事を受け止めざるを得ない。


「良太の人生だものね……」

 口ではそう言っても、心配と不安で仕方がない。


「そうだ、良太が自分で責任をもって決めて、行動していけばいいんじゃないか?」

「ああ…… 分かっている」

 良太も、分かってはいるようだ。

「だったら、とりあえず自分の力で生活していけ。そして自分で決めればいい。鈴橋さんも、心配かもしれないが、弟を見守る事も大事じゃないのか?」


「そうね……」

「おっさん、ありがとう。姉ちゃんと二人で話していたら殴られていたかもしれない……」

「良太!」

「まあ、一発くらい殴られほうがいいかもしれんがな……」

「おい!」


 良太が、両手で頭を隠した。

 その姿に、少しだけ胸の奥が軽くなった気がした。
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