その星、輝きません!
「急におしかけて、その上ごちそうにまでなって悪かった……」

 一応、悪かったと言う自覚はあるらしい……
 ビールを数本空けたが、足取りもしっかりしているとこを見ると、お酒は強い方なのだろう……

「いいえ。たいした物じゃないから」

 彼を、アパートの下まで送りながら返事をした。

 道路わきに止まっているのは、彼の車だと思われる。彼の姿が見えると、さっと運転手が車から降りてきた。

「いや、旨かった。それじゃあ……」

 彼はチラリと私の方を見た後、車の方へ向かって歩きだした。


「あの……」

 彼の背中に向かって声をかけた。

「何だ?」

 彼が、振り向いて私を見た。


「今日の、カウンセリング急に休んでしまってごめんなさい……」

「ああ、気にしなくていい」

「それから……」

「うん?」


 彼が、眉を上げた。さりげなく動かす表情がサマになるのが腹立たしい。街頭の光が、彼の顔を照らして、なんだかドキドキしてきた。


「あの…… 良太の事、ありがとう…… なかなか上手く話しが出来なくて……」


「彼もきっと悩んでいるんだよ。真っすぐ進めず迷う時があってもいいんじゃないか?」


「うん」
 
 下を向いて頷いた。


「あんた、カウンセラーなのに、弟の事はカウンセリング出来ないんだな」

 彼が、少し呆れたように見ている。

 私は、大きくため息をついた。


「情けないわね。良太の事になると、感情が先だってしまって…… 身内だと上手くいかないものなのかも……」


「そんなもんじゃないのか? それだけ大事に思っているんだろ?  俺も、近くにいるから、良太の事、気にかけておくよ」


 彼は、軽く手をあげて、車に乗り込んだ。
 
 うん?
 良太を気にかけておく? そんな間柄だったかな? 私達……


 体格のいい運転手が意味ありげにほほ笑み、私に頭を下げた。とりあえず、頭を下げておいた。


 私は、ただ…… 遠ざかって行く車を、ぼーっと見送るしかなかった。

 

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