その星、輝きません!
 「おはようございます。お休み頂いて、すみませんでした」

 パンパンに膨らんだ、紙袋をカウンターの上に置いた。芋羊羹に、ワッフル、おせんべいなどお菓子がめいっぱい入っている。


「こんなに沢山、悪いわね」

 そう言いながら、医院長が袋の中を覗いている。


「良太くんとは、話せたの?」

 薫が、心配そうに私の横に座った。


「まあ、話せたっていえば話せたんだけど…… それが…… 聞いてよ。あの財布の男が! あっ」

 いや、皆に話す事でもないかもしれない……
 慌てて口を閉じたが、遅かったようだ。


「どうしたのよ。もしかして、あの男って一条さん?」

「あ…… えっと……」

「いいから、話なさい」

 薫が、腕を組んでじっと私を見た。その周りに、スタッフ全員が顔を並べている。逃げられそうにない。


「なんていうか…… 一条さんが、良太との間に入ってくれて…… 話が出来たというか……」

「えっ?」

 皆の顔が、「?」になった。

 仕方なく、東京での出来事を話した。


「ええ! 東京のど真ん中で偶然出会うなんて事ありますか?」

 あかねが、興奮してしゃべる。


「東京のど真ん中って言ったって、都心から、かなり外れた場所だよ」


「そういう問題じゃないでしょ?」

 薫が言う。


「どうして、ご飯を一緒に食べる事にまでなるの?」
「歩いている鈴橋さんを、わざわざ車を停めてまで声をかけるかな?」
「良太くんの後を追いかけてまで、アパートに来るってどういうこと?」
 本人差し置いて、勝手にあーだこーだと言い出した。


「それより、一条さんとのカウンセリングは大丈夫だったの?」

 話を逸らせた方がよさそうだ。
 彼からも、聞きそびれてしまったし……


「まあね…… 思っていた通りだったわ」

「何が? 確認したい事って何だったの?」

 薫を見ると、なんだか楽しそうにニヤニヤしている。


「思っていたより、面白いかも?」


 薫が言うと、皆もニヤニヤしなが業務の準備を始めたのは気のせいだろうか?

 何なのこれ?

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