その星、輝きません!
「おまちど!」
 
 威勢のいい店員の声と同時に、ラーメンと餃子がテーブルに置かれた。

「わー。美味しそう。いただきます」

 両手を合わせ、箸をもつ。昼から何も食べていない。よだれが出そうだ。ズルズルと口に麺を入れる。

「美味しい」

 麺に豚骨のスープが上手く絡み、なかなかの味だ。
 彼も、麺を口に入れた。

「うん」

 旨いという表情で頷いている。彼の口にも合ったようで良かった。



 店を出て、もう一度車に乗り込む。

「どちらに行けばよろしいですか? 社長」

 車の窓から、コインパーキングの清算をしながら言った。

「右へ。しばらく、そのまま走って」

「はい」

 ウインカーを出し右へ曲がる。

「小さい車だな?」

 助手席をめいっぱい後ろに下げた彼が言った。


「申し訳ありませんね。少しの間なので、我慢してください」

 ふんっ。これでも、私のお気に入りの車なんです。今の月給じゃこれが精一杯。


「めったに乗れないから、たまにはいいさ。まさかと思うが、この車で長野から来たのか?」

「ええ。勿論。他に車なんてないし」

 彼をチラリと見て言った。軽自動車だって充分高速には乗れる。乗り心地は多少悪いかもしれないが、困った事はない。


「大変じゃないのか? こんな小さな車で、高速走って事故に遭ったら、ひとたまりも無いぞ」

 なんだか、彼の声が怒っているような気もする。

「大丈夫ですよ。スピード出さなければ。もう、慣れたし」


「ふーうー」

 彼は、溜息をついて黙り込んでしまった。


「どこまで行けばいいんですか?」

「あー。次の信号を左だ」

 左に曲がったのだが……

「ちょっとー! 何ですかここ?」

 目の前に広がったのは、川沿いの大きな公園だ。


「休憩だ」

「えーーーー。もう、帰りたい!」
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