その星、輝きません!
私は、適当に電話を切り、シャッターの前の安子さんのもとに向かった。
「大丈夫?」
「ああ、びっくりした。シャッター開けたら、昨日のいい男がおったよ」
ああそうか、どこかで見たと思ったら昨日の財布の人だったんだ。
私は、安子さんと並んで膝をつくと、シャッターへ手をかけた。思ったより軽く上がっていくシャッターを開けると、昨日の財布の男の腕が見えた。
シャッターはすんなりと上がり、その男とご対面した。
「ありがとうございます」
取り合えず、お礼を言ったほうが良い気がしたのだが……
「シャッター、買い替えたら?」
それだけ言うと、その男は路肩に停めてあった車へと乗り込んで行ってしまった。
あんたのせいで、二回もシャッター開けそびれたのに。なんだったのだろうか?
遠ざかっていく車を、首を傾げながら見送った。
「ああ、面白かったー。シャッター開けたら、イケメンが現れるなんて運命感じたよ」
安子さんが、屈みこんで大笑いしている。
私もつられて笑い出した。
「どうせなら、抱き着いちゃえば良かったのに」
「あははっ。夢に出てきそうだ」
二人で、笑いながらクリニックの中へ入った。