その星、輝きません!
 画面にメールが表示された。

『今、成田だ。ロスに着いたらまた、連絡する』

 昨日、連絡先を交換したばかりの相手からのメッセージだ。こういう場合はどうしたらいい。
無視する? でも、あんなに祝ってもらって、無視は失礼な気もする。


『お祝いして頂きありがとうございました。お気をつけて』

 無難な返事をしておいたつもりだ。


 向こうも忙しいのだろうから、それほど連絡も来ないだろう。それに、一か月も海外に行ってたら、徐々に私の事など忘れるだろうと思っていた。取り合えず、財布男と登録した。

 だが、このメールは全ての始まりに過ぎなかった。



 ベッドにもぐり、スマホでお気に入りの書籍を読み入っていると、画面が通話の通知に変わった。財布男と画面に表示されている。まさか、本当にロスに着いたと連絡して来たわけではないだろう……


「もしもし……」

「今、ロスに着いた。まだ、起きていたか?」

 まさかの、着いたコールだった。


「ええ…… 起きてました」

「こっちは朝だ。天気もいいから、ビーチがとても綺麗だ」


 何て答えればいいのか?よくわからない。


「そ、そうですか。着いたばかりなのなら、お休みになられたいのでは?」


「いや、朝食が済んだら、出勤しなければならない」

 あー。ロスにも会社があるんだな。改めて凄い人だと思う。


「お忙しいのですね。無理せず、頑張って下さい」

「ああ、ところで、俺と結婚する気にはなったか?」

 話の流れで言う事なのだろうか? 益々、冗談にしか聞こえない。


「へっ? 無理だと申し上げたはずですが……」

「そうだったか?」

「はあ? 時差ボケなのでは?」


「あっ。こんな時間だ。おやすみ。またな」


 通話が切れてしまった。告白しておいて、まともに返事も聞かないってどういう事?
 暇つぶしにからかっているように思えてくる。

 ピロリン♪

 また、スマホが震えた。

 画面を見ると、長―い綺麗なビーチが広がっていた。ヤシの木や、周りの看板の文字が、異国の地である事を思わせる。

 いいなぁ…… ふと、そんな事を思ってしまった。

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