その星、輝きません!
 「えっ? どういう事?」

 向き合って座っている明子の目が点になった。時間が出来たので明子をランチに誘った。


「だから、この前、この店の前で財布を拾ったでしょ?」


「それは、覚えているわよ。だけど、なんであんたが、その男と、プライベートジェット機で旅行に行く事になるわけよ?」


「私だって、よく分からないけど…… そういう事になったのよ」


「それで?」


「うーん。毎日、結婚しろって、言われるんだけどさ」

 うっぷー
 明子は、口に含んだ水を吹き出した。


「冗談だとは思うんだけど、私だて、困っているんだから……」


「何に困っているのよ? プライベートジェット持っているなんて、想像つかないお金持ちじゃない。多少、年齢が上とか、見た目がちょっととか、しょうがないじゃない。あんたを好きになってくれるなんて、有難い事でしょ」


「もう!年齢だって私とたいして変わらないわよ。顔もスタイルも申し分ないわ。どちらといえば、完璧よ」


「へっ? どうしてそんな人が……」


「だから、私も困っているのよ。私が、そんな完璧な人から好かれる理由がないのよ」


「確かに…… あんたをね…… よっぽど変わっている人なのかな」


「失礼ね。私だって魅力の一つや二つあるはずよ! だってね、秘書の人にお綺麗ですねって、言われたのよ」

 私は、自慢げに腕を組んで言った。見る目のある人には、私の魅力がわかるのだ。


「確かに、あんたは美人だと思うわ。だけどさ、その気の強さとか、その反面、心配性で相手の事ばかり気にするところがあるじゃん。その、財布男が、どの程度あんたの事、わかっているのかね? 見た目だけだとさ……」

 悔しいけど、本当の事だ。


「まあね……一時期の気の迷いだと思うけど…… きっと、そのうち飽きるわよ」


「そうかな…… あんたはどうなのよ? また、会いたいとか? 気になったりしないの?」

「私は別に…… 気になんてしていないけど……」


「そうかな。一緒に旅行にまで行くなんて、あんたにしちゃ珍しいと思うけど。本気で嫌だったら、パイロットの首絞めてでも、飛行機から飛び降りたと思うけどね」

「えっ?」

 確かにそうかもしれない。いくら強引でも、一緒に旅行に行って、しかも楽しんでくるなんて、今までの私からは考えられない。


「まあ、あんたも満更でもないんじゃない? ちゃんと彼と向き合ったら。後悔しないようにね。私は、あんたの幸せを願うだけだから……」

「そんな事……」

 私は、パスタの最後の一口をじっくりと噛み締めた。


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