その星、輝きません!
 「ロスで地震に巻き込まれて、スマホを無くした。会社の家族が巻き込まれて、必死で救助に加わっていた。ずっと、連絡も出来なかった。さっき、日本でスマホを買い替えて……」


 取り合えず、状況を説明しようとしてくれているのだと思うが、私の頭の中は理解する余裕などなかった。

 ただただ、彼の顔をじっと見つめる事しか出来ない……


 彼も、腰を下ろし私と向かい合った。


「連絡くれれば良かっただけなのに…… こんなところまで来なくても……」

 何を言えばいいのか、分からない……


「ごめん…… あんたから、今まで一度も俺に連絡くれた事なかっただろ? 通話歴みたら、あんたからの連絡が百回超えていた。メッセージもだ。流石に俺だって、慌てた……」


 私は、両手を伸ばし、彼の頬に触れた。

 本物らしい……

 指先から伝わる、彼の暖かさに、我慢していたものが崩れ落ちた。

 頬に涙が伝わってきたのがわかったが、どうでもよかった。


「だからって…… こんなに、疲れた顔してるのに……」


 彼が、生きている事を、もっと感じたかった。
 今、ここにいる事を確かめたかった。


 私は体を前に起こすと、彼の唇に自分の唇を重ねた……


 唇からの暖かい感覚に、はっと我に返った。


 私は、何をしたんだ…… 

 慌てて、彼から離れようと体を反らすと同時に、もっと強く引き寄せられた。


 一度離れた唇が、もう一度重なった。

 今度は、もっと強く。

 彼の片手が、私の頭の後ろに回り、もう片方の手が私の頬を包む。
 息もできないほど、何度も何度もお互いを確認するように、唇が重なった。


 もう、自分の気持ちをごまかす事などできなかった。


「好きなんだ……」

 わずかに離れた彼の唇が、そう言った。


「すごく、すごく、心配したのよ…… もう、会えないんじゃないかって……」


「悪かった……」

 彼の腕が背中まわり、ぎゅっと力強く抱きしめられた。


 生きていてくれて良かった……

 私は、彼の胸の中で、声を出して泣きじゃくった。
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