その星、輝きません!
心配してくれる人
 *****

 急遽、ロス郊外にある建設中のビルに向かわなければならなかった。担当者に任せる事も出来たが、早く日本に帰るためにも、自分で現場の状況を確認しておきたかった。

 ロス市内とは違う、穏やかな風景が目に入った。きっと、写真を送ったら彼女が喜ぶだろう。行ってみたいと、目を細める彼女の顔が浮かんで、つい顔が緩んでしまった。

 車から降りると、ビルに入る前にスマホを出し、街の様子を画面に映した。

 ガタッ!!!


 足元を救われるような、大きな揺れに体が傾き、その瞬間、スマホが手元から落ちた。慌てて、拾おうとしたが、またもややってきた大きな揺れに、手で身を守った。

「社長! 大丈夫ですか?」

 山下が駆けつけてきた。

「ああ。お前は大丈夫か?」

「ええ。ここは、危険です。パークの方へ避難しましょう」

 辺りを見回してみたが、あらゆるものが崩れ落ちていて、スマホを見つける事は出来なった。


 大きな地震が起きたのだと、把握するのにしばらく時間がかかった。

 パークには大勢の人達が避難してきており、激しい英語や、泣き声が飛び交っていた。幸いにも、建設中のビルはほぼ完成しており、耐震もしっかりしてあったため、ビルじたいが崩れる事はなかった。中にいた、作業員も無事だった。


 ただ、近くに社員の住宅が入ったマンションがあり、家族と連絡のとれない者が相次いだ。
 現場にいた社員達と、マンションに向かったが、それからは地獄だった。

 山下が、何度も日本へ連絡を入れていたが、なかかな繋がらなかった。二日ほど経って、やっと安否を伝える事が出来たが、それを最後に、山下のスマホも充電が切れてしまった。
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