いじわる同級生とにせもの恋愛中。
「おいチビ。ちょっと来い」



靴を履き替えたところで、背負っていたリュックが引っ張られる。



「うぇ!ちょっ、いきなり何!!」


人通り少ない東階段まで引きづられてきたわたし。ここまで連れてきた張本人を見上げて睨んだ。



「“いきなり何”は、こっちのセリフ。俺、お前の彼氏になった覚えないんだけど」



……え。



「さ、さっきの、聞いてらっしゃいました……?」



「自分の声の大きさ、自覚しろって言ったよな?」



不機嫌を隠さない顔で見下ろされる。




「ご、ごめん!咄嗟に出てきたのが、杉本の名前で……。それで、勢いのまま言っちゃって……」



「はぁ……。どうすんだよ。絶対滝山以外のやつにも聞こえてる」



「……」



やらかした……。どうしよ。夏月にバレたら、絶対今以上に過保護になっちゃう……。それじゃ、夏月離れできないよ……。



「お願いします!ほとぼりが冷めるまで……!ある程度したら、別れたってことにするから!」




「……はぁ。半年。それだけあれば、滝山も落ち着くんじゃねーの?」



「……ありがと!!!」



まさか、杉本がこんなに物分りのいい人だなんて思わなかった!




「それにしても、もっとましな嘘があったろうに。やっぱバカ」



……。むかつく……。むかつくけど!正論すぎて何も言えない……。














それからはすごい大変だった。



まず、一緒に教室に戻ったら、クラスメイトに囲まれ質問攻め。



情報回るの、早すぎません?



それをなんとか切り抜けたら、今度は親友の澪音(みおん)からの質問攻め。



あ、澪音っていうのは、夏月離れを進言してくれた、小学校からの親友の、河木(かわき)澪音(みおん)



パニックの澪音には、ほんとのことを伝えた。そしたら澪音は、「よく夏月に言った!えらいえらい!」って、頭なでてくれた。さらには杉本に、「私の実胡泣かせたら、絶対許さないから!」って豪語。



そんな澪音を、杉本はスルー。


こんな突拍子もない嘘に付き合ってくれたから、わたしからは何も言えない……。




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