あなたと出会って世界が変わる
病院のご飯は3食もあって、僕には贅沢だ


あれからひなは家に帰らずに、僕と一緒に入院している


看護師の高橋さんが僕の横にひなのベッドを用意してくれた


僕が歩けるようになった頃、ひなは病室を抜け出し、毎回人にあってはその場でしゃがみ込み震えていた


僕はそんなひなをの手を引き病室へ連れて帰る毎日


怖いなら出なければいいのに、何でだろう


「ひなもう外へ出るはやめよう?」


「私は、奏くんにあのひまわりをあげたいの。入院してる人には元気になってねって、花をあげるって聞いたから」

窓から見えるひまわりを指さす


「その気持ちだけで十分だよ。それに、ひまわりは病室からでもひなと一緒に見れる」

そう言うと、ひなが嬉しそうにする


最近のひなは前よりも表情が明るくなった


入院して1ヶ月がたった頃、ひなのお父さんに話があると呼ばれた


病院の中庭のベンチに腰をかける


「僕、ずっと言いたかったんです。ひなを巻き込んでしまってすみません」

ずっと、謝りたかった。僕のために1ヶ月もひなはここで過ごしている


「いや、いいんだ。あんなに楽しそうなひなを見るのは久しぶりなんだ。ありがとう」

何言われても受け入れる覚悟だったのに、帰ってきたのはお礼の言葉


「僕の方こそ、助けてくれてありがとうございました」


こんな良い親に育てられたから、今のひなが居るんだと改めて思った


「今日呼んだのはな、奏くんに僕たちの息子になって欲しくてな、どうかな?」


「え?」

息子?


「施設に行くと聞いてね。ひなも僕の妻も奏くんならと歓迎しているんだ」

嬉しい提案。だけど、僕の答えはひとつだ


「有難いですが、お断りします。僕、これからは前を向いて、ひなを守れるくらい強くなりたいんです。だから、甘えられません」


「ははっ、もう揺るがないって顔だね。ひなをよろしく頼むよ。でも、何かあったら遠慮せずに僕たちを頼ってね」


「ありがとうございます」

いつか、僕が家族になれるなら、お父さんでは無く、お義父さんって呼びたい


なんて、僕の高望み


いつか、ひなの笑顔が見れるように、僕は強くなるんだ


そう、心の中で誓った
< 134 / 180 >

この作品をシェア

pagetop