失恋
 カーテンから射す光に目を覚ました。横では課長が眠っている。

 優しい優しい愛撫を全身が覚えている。幸せだった。
 自分から望んだこと。それでも。これでおしまいと思うと悲しい。
 課長の寝顔が愛しくて、頬に口づけた。

「ん……。ああ……。おはよう」
「おはようございます」
「……」

 課長はゆっくりと起きた。そして、私をじっと見た。

「これでよかったの?」
「……はい」
「僕は君を哀れんで寝たわけではない」
「……は、はい」 

 課長の顔が滲む。

「この気持ちをどういうかはわからない。でも、愛の一つだと思っているよ」

 課長の指が私の髪を優しく梳いた。

「ありがとうございます」
「でも、これ以上は……」
「わかっています」
「君といると君を好きになっていく。でも、僕は家族に幸せなままでいて欲しい。君への気持ちがあるからこそこれ以上一緒にいられない」
「はい 」
「君も幸せになってほしい。心から思うよ。でも、やっぱり僕とではない。分かるね?」
「……っ」

 言葉がつまった。

「っそれでもっ、それでもしばらくは課長を想っていてもいいですか? もう少しだけ時間を下さい。もう何も望まないから!」

 課長は私を抱きしめた。

「すまない。本当にすまない。でも、もう今後はただの課長と部下だ」
「っ……っ」

 私は嗚咽を堪えきれずに課長の胸で泣いた。
< 3 / 7 >

この作品をシェア

pagetop